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第3部 第14章 国会

一、権力分立の原理  二、国会の地位  三、国会の組織と国会の活動   四、国会の権能と議院の権能


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三、国会の組織と国会の活動


1 日本の国会は二院制を採用



さて、ここから国会の組織はどのようになっているかを説明します。








国会は衆議院と参議院で構成される二院制を採用しています。憲法42条で定められています。

衆議院の議員定数は480人(小選挙区から300人+比例代表から180人)、任期は4年、被選挙権は25歳以上で、解散があります。

参議院の議員定数は242人(小選挙区から146人+比例代表から96人)、任期は6年(3年ごと半数改選)、被選挙権は30歳以上で、解散がありません。




衆参両議院の違いを表にまとめるとこのようになります。

 

衆議院
参議院
議員の定数
480
242
任期
4年(解散があれば資格を失う)
6年(3年ごと半分が選挙で入れ替わり)
選挙権
20歳以上
20歳以上
被選挙権
25歳以上
30歳以上
選挙区
小選挙区:300人(全国300区)
比例代表:180人(全国11ブロック)
小選挙区:146人(各都道府県単位で47区)
比例代表:96人(全国1ブロック)
解散









現在における二院制の存在理由は2つあります。

@衆議院の軽率な行為や過誤を参議院がチェックすること、
A両院の任期や資格、選挙制度が異なることで多様な民意が国政に反映できること、です。




2 衆議院の優越


両院は原則的に対等ですが、いくつかの規定については衆議院の優越が認められています。
優越とはひいでている、すぐれている、という意味です。

衆議院の優越を認めている理由は、

@一院を重視することで国会の意思形成が容易にできること、
A衆議院の方が議員任期が短く、解散制度もあることから民意に密着していること、

です。


衆議院に認められている権限は、予算先議権(60条1項)、内閣不信任決議権(69条)、です。

予算先議権とは国家が年度に使う予算を先に決める権限です。
内閣不信任決議権の説明は15章でします。

参議院にも認められていますが衆議院の決議が優先するものは、法律案の議決(59条)、予算の議決権(60条2項)、条約の承認(61条・60条2項)、内閣総理大臣の指名(67条2項)があります。

法律案の議決権とは、法律案を審議して法律を制定させる権限です。

予算の議決権とは、内閣の作成した予算案を審議し予算を成立させる権限です。

条約の承認とは、内閣の締結した条約を審議して承認を与える権限です。

内閣総理大臣の指名とは、国会議員のなかから内閣総理大臣となる者を指名する権限です。


衆議院の決議が優先するものとして、法律案の議決権(59条)を例に見てみましょう。
法律案の議決が衆議院と参議院で意見が食い違ったときの場合です。

法律案で衆議院が賛成多数で可決しましたが、参議院が反対多数で否決されました。
このとき衆議院代表と参議院代表が集まり両院協議会を行ないます。

ここで話がまとまればよいのですが、まずまとまりません。
まとまらないと衆議院が改めて出席議員の3分の2以上の賛成で可決したら法律は制定されます。

もし参議院が可決も否決もしなかったら衆議院の可決から60日経った時点で、衆議院は再可決することも可能です。













衆議院にのみ認められている権限、 と
参議院にも認められているが衆議院の決議が優先するもの、 を
表にまとめるとこのようになります。



衆議院にのみ認められている権限

内閣不信任決議権(69条)
予算先議権(601項)




参議院にも認められているが衆議院の決議が優先するもの

事項
内容
法律案の議決(59条)
@法律案は、憲法に特別の定めがある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となる。
A衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
Bなお、衆議院は、参議院が衆議院と異なった議決をしたときは、両院協議会を開くことを求めることができる。
C参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に議決をしないときは、衆議院はその法律案を否決したものとみなすことができる。
予算の議決602項)
予算について参議院で衆議院と異なった議決をした場合、法律の定めるところにより、両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
条約の承認61条・602項)
条約の承認について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、法律の定めるところにより、両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が衆議院の承認した条約を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
内閣総理大臣の指名672項)
内閣総理大臣の指名について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、法律の定めるところにより、両院協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする




3 選挙制度



国会の議院は国民が選挙によって選び出します。
一口に選挙と言っても候補者に投票するものもあれば、政党に投票するものもあります。

こうした選挙のしくみを選挙制度といいます。

選挙には衆議院議員選挙(総選挙)参議院議員選挙があります。
まずは衆議院議員選挙から説明します。


ここでは例としてジムン党、ミンフ党、コンメン党、シャムン党、キョーチャン党、という政党が登場します。

ジムン党が一番大きい政党です。








選挙制度には大きく分けて小選挙区制中選挙区大選挙区比例代表制があります。

小選挙区制とは1つの選挙区から1人の議員を選びます。
大選挙区制とは1つの選挙区から2人以上の議員を選びます。

日本は終戦直後大選挙区制を採用していましたが、以降は中選挙区制をそれぞれの都道府県単位で採用しています。

中選挙区制大選挙区制はほとんど同じもの、と考えてください。









例えば、小選挙区制では1つの選挙区からジムン党議員が1人しか当選しません。

ですが中選挙区では1つの選挙区からジムン党議員2人、ミンフ党議員1人、コンメン党議員1人、シャムン党議員1人、という具合にそれぞれ支持者数に近い形で議員が選ばれます。

中選挙区制では小さな政党でも当選する確率が高くなるので、国民の民意が反映しやすいのです。

しかし、小さい政党がいくつも乱立してしまうので国会の議論でまとまりがつきにくいという欠点もあります。

するとジムン党のような1つの大きい政党だけが力を持ってしまい、結果的にジムン党の独裁体制になってしまいました。


では小選挙区制ではどうでしょう。

小選挙区制では1つの選挙区から1人しか選ばれません。

例えば、ジムン党反対派の人ならジムン党に勝てる立候補者に投票しよう、と考え他にシャムン党、キョーチャン党の候補者がいてもジムン党を落とすためにミンフ党に投票します。

小選挙区制は小さな政党の乱立を防ぐことができ、二大政党制になりやすくなります。

事実、小選挙区制を繰り返した結果、シャムン党、キョーチャン党などの議員数は減って、ジムン党とミンフ党という二大政党が大きな力を持ちました。









二大政党制の長所は政治家たちにいつ政権交代するかわからない、という危機感が常にあり、政治家たちは緊張感を持って政治に取り組みます。よって政治腐敗が起きにくいのです。

短所は二大政党以外の少数の党の意見が切り捨てられてしまうことです。


そこで登場するのが比例代表制です。

現在、衆議院選挙では小選挙区制比例代表制を組み合わせた小選挙区比例代表並立制を採用しています。

小選挙区比例代表並立制では、

衆議院選挙の小選挙区制では全国を300の小選挙区に分けてそれぞれから1人ずつ議員を選びます。
衆議院の定数は480人で、残りの180人は比例代表制で選びます。








比例代表制とは政党の名前を投票用紙に書いて投票し、政党ごとの得票数に応じて各政党に議席を配分する制度です。
衆議院選挙の比例代表制は全国を11のブロックに分けて投票します。

各政党にはそれぞれ候補者に順位をつけた名簿があり、その名簿の順位が高い候補者から順に当選していきます(拘束名簿方式)。

これで残りの180人が決まるのです。


比例代表制なら死票が少なくなります。
死票とは落選した人に投じた票のことです。

小選挙区だけでは死票が増える可能性が高いのです。
小選挙区制では大きな政党には有利ですが、小さな政党に投じられた票は死票になってしまいます。

ここで比例代表制もあわせて導入すれば、政党の得票率に応じて議席が分配されるから、小さな党でもある程度の議席が確保することができます。
これにより様々な民意が反映できます。

この小選挙区比例代表並立制が現在の衆議院議員選挙の選挙制度なのです。


衆議院議員選挙は4年の任期満了か、途中の解散のときに衆議院全員を選び直します。そのため総選挙とも言います。




さて、参議院議員選挙の制度を説明します。

参議院の選挙制度も小選挙区の選挙と比例代表制を組み合わせたものですが、衆議院のものとは異なります。

参議院選挙の選挙区は都道府県単位になっています。
有権者数に応じてA県8人、B県6人、C県4人、と選出しますが3年ごとに半数を改選します。

半数改選のときはA県4人、B県3人、C県2人、と選出します。当選者が1人の選挙区では結果的に小選挙区と同じことになります。
こうして47都道府県の選挙区から146人が選ばれます。

参議院選挙の比例代表制の選挙は全国が1つの選挙区になっています。

投票は政党名を書いても候補者名を書いてもどちらでも良いです。まず政党名で得票数を合計し、個人名が書かれた票はその人が所属する政党への投票として計算されます。この合計で得票数に比例した各政党への議席配分がされます。配分された議席数分だけ個人名で書かれた候補者が得票数が多い順に当選します。








選挙制度の特徴をまとめるとこのようになります。

選挙制度
しくみ
長所
短所
中選挙区制
大選挙区制とほぼ同じもの)
1つの選挙区から2以上選出
・死票が少なく民意が反映されやすい
・少数政党からも当選者が出やすくなる
・選挙区が大きいので選挙費用がかかる
・少数政党が多く政治が安定しない
小選挙区制
1つの選挙区から1選出
・大政党に有利になるため、二大政党制になりやすい
・選挙区が小さいので選挙費用がかからない
・接戦でも1人しか当選しないので死票が多い
・少数政党が伸びにくい
比例代表制
政党ごとの得票数に応じて当選者を決める
・死票が少なく民意が反映されやすい
・少数政党も議席を獲得しやすい
・少数政党が多く政治が安定しない




4 国会議員の地位


国会議員にはいくつかの特権が与えられています。
特権とは特定の人に特別に与えられる優越的な権利のことです。

不逮捕特権免責特権があります。この2つを説明します。








国会議員はすべての国民の代表として国会の仕事をこなさなければなりません。
そこで国会の仕事中に邪魔されないように特権が与えれているのです。

国会議員の特権の1つ目不逮捕特権です。

不逮捕特権とは国会議員は国会の会期中は原則として逮捕されない、というものです。

逮捕を行なうのは警察、つまり行政です。
行政権による逮捕権の濫用を防いで議員の職務遂行を確保するための特権なのです。

また国会の会期前に逮捕された議員なら議院は釈放を要求できます。




不逮捕特権の例外として、院外での現行犯院の許諾がある場合には、会期中でも逮捕が認められます。

こういった場合なら逮捕権の濫用が考えにくいからです。


国会議員の特権の2つ目免責特権です。

免責特権とは国会議員は議院で行なった発言・表決については原則として議院の外で責任を問われることがない、というものです。

免責特権は議員に院内での言論の自由を厚く保護しています。
発言・表決について責任が問われてしまうと、それを恐れて十分な審議ができません。

そうならないよう免責特権が認められています。





免責特権の例外として院内での懲罰責任は免責されず、責任を問われる余地もあります。

職務上関係ない発言には当然に適用はありません。




5 国会の活動



国会で開かれる会議には常会臨時会特別会、の3つの種類があります。

なお、国会は会期ごとに活動し(会期独立の原則)、国会の会期中に議決に至らなかった案件は、原則として後の会期に継続しません(会期不継続の原則)。

同一問題については会議の効率的運営のため、同じ会期中に再審理しません(一事不再議の原則)。

国会の種類
常会
特別会
臨時会
1月にスタートし、150日間開催される。
・延長は1回までできる。
・開会式には天皇が臨席する。
・予算や法律を決める。
・総理大臣を選ぶ。
・衆議院の総選挙後、30日以内に開かれる。
・通常国会を補うために不定期に開催される。
・衆・参議院のどちらかの41の議員が開催を要求した場合にも開かれる。
・延長は2回までできる。

常会毎年1回必ず開かれます。毎年1月に始まるのが通例になっています。
期間は150日間で、その年の4月からの1年間の予算を決めます。期間が過ぎたら1回だけ延長できます(延長国会)。


臨時会は急いで法案を審議すべき必要があったり、補正予算を組む必要が出てきたりしたときに開かれます。
衆参どちらかの議員の総議員の4分の1以上の要求があれば開かなければなりません。


特別会は衆議院解散から40日以内に衆議院総選挙を行ない、その選挙から30日以内に開かれます。
選挙の結果、国会の政党の議員数が変動しているから、新しい世論の代表によって総理大臣を選び直すのです。



この他に、衆議院が解散しているときに緊急事態が発生し、国会を開かなくてはならないとき参議院の緊急集会が開かれます。

緊急集会は内閣のみ求めることが出来ます。緊急集会でとられた措置は臨時のものです。

次の国会開会の後、10日以内に衆議院の同意がない限り将来に向かって効力を失います。







【まとめ】
第3部 統治機構
第14章 国会
三、国会の組織と国会の活動

1、国会は衆議院と参議院で構成される二院制を採用している。(表あり)

2、両院は原則的に対等だが、
いくつかの規定について衆議院の優越が認められている。(表あり)

3、 ・選挙制度には小選挙区制中選挙区大選挙区比例代表制がある。
小選挙区制: 1つの選挙区から1人の議員を選ぶもの。
中選挙区 大選挙区制:1つの選挙区から2人以上の議員を選ぶもの。
比例代表制:政党ごとの得票数に応じて当選者を決めるもの。

小選挙区比例代表並立制とは小選挙区制と比例代表制を組み合わせたもの。

4、国会議員には不逮捕特権免責特権がある。

5、国会で開かれる会議には常会臨時会特別会、の3つの種類がある。

国会は会期ごとに活動し(会期独立の原則)、国会の会期中に議決に至らなかった案件は、原則として後の会期に継続しない(会期不継続の原則)。
同一問題については会議の効率的運営のため、同じ会期中に再審理しない(一事不再議の原則)。
衆議院が解散しているときに緊急事態が発生し、国会を開かなくてはならないとき参議院の緊急集会が開かれる。


                     ケンくんノート


第3部 第14章 国会 三、国会の組織と国会の活動 おしまい

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