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第3部 第14章 国会

一、権力分立の原理  二、国会の地位  三、国会の組織と国会の活動   四、国会の権能と議院の権能


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二、国会の地位



国会について説明します。


国会立法権を行使します。立法とは法律を制定することです。


国会には3つの地位があります。

1、国民の代表機関
2、国権の最高機関
3、唯一の立法機関

です。

1 国会は国民の代表機関



43条1項で、国会は国民の代表機関であると定めています(代表機関性)。


代表と言っても代表機関の行為が国民の行為だとみなされるわけではありません。

国民は代表機関を通じて行動し、代表機関は国民意思を反映するものとみなされる、としています。

例えば鉄道を造る公約を掲げた国会議員立候補者を、国民が投票によって選んだとしましょう。
そして当選したその国会議員がその公約を実施すれば国民の意思が反映された、といえますね。


ここで例として出てきたジムン党とは政党のことです。

政党とは同じ政策や目標を掲げ、その政治の実現を図ろうとする人たちの集まりのことです。

選挙はお金もかかるし宣伝も大変なものです。
一人で選挙活動をするより自分とよく似た考えを持つ人たちのいる政党に入って選挙戦にのぞんだ方が有利なのです。
実際に国会議員に当選してからも、多数派を作りやすくなり法律案が通りやすくなります。


国民と議員の関係においては、命令委任ではなく自由委任の考え方を採用しています。
委任とはお任せします、という意味です。

命令委任とは公約違反をした国会議員を辞めさせる、というものです。

鉄道を造る公約を掲げた国会議員が当選したけれど、その国会議員はいつまでたっても鉄道を造らなかったとします。

すると、選挙民から命令を受けたのに、それを守らないのは命令に違反したと考えます。
命令違反した国会議員は職を辞めさせてしまえ、ということになります。









しかし、この命令委任の考え方は少数説です。

鉄道を造る、という公約を掲げた議員が当選したあと、大きな災害が起きたとします。
そうなると被災した人々に救援物資を供給したり、住む場所を提供したりしなくてはなりません。

それなのに命令委任の考え方だと、何が何でも鉄道を造らなくてはならないのです。









そこで自由委任の考え方が採用されています(通説)。

自由委任とは議員は選挙民から自由である、という考え方です。

自由委任の考え方なら、鉄道を造る公約を掲げた議員が当選した後、大災害が起きても鉄道のことは一旦置いておいて、災害復興のために予算を使うことができます。









だからと言って、何でもかんでも自由委任では活動をさぼる議員も出てきてしまいます。

そこで最近は半代表という考え方が登場しています。半代表とは半分自由委任ではあるものの、半分選挙民に拘束される、という考え方のことです。





2 国会は国民の最高機関



41条で国会は国権の最高機関であると定めています。

国権とは国の権力、つまり内閣や裁判所などの機関のことです(最高機関性)。


最高機関とは政治的美称です。

美称とは美しい呼び名のことです。国会は主権者である国民に直接選挙され国民に直結していることから、国政の中心的地位を占める機関であることを単に強調しているだけなのです。

行政府や裁判所もそれぞれの領域において最高独立機関と考えています。


3 国会は唯一の立法機関



同じく41条で国会は唯一の立法機関とも述べられています(唯一の立法機関性)。


この「唯一」には2つの意味があります。

@国会以外の機関に立法(法律の制定)を認めないこと(国会中心立法の原則
A国会による立法は、国会以外の機関の関与がなくても国会の議決のみで成立すること(国会単独立法の原則

です。


原則、というからには例外もあります。

国会中心立法の原則の例外として、委任立法(73条)、最高裁判所の規則制定権(77条1項)、地方公共団体の条例(94条) 、両議員の規則制定権(58条2項)があります。

国会単独立法の原則の例外として、地方特別法(95条)、内閣の法案提出権等があります。









国会中心立法の原則の例外委任立法(73条)についてですが、その通り委任立法とは国会から行政機関に立法を委任して専門的な法律を制定させる、というものです。

通説では委任する内容が白紙的なものでなく具体的なものであれば、国会中心立法の原則に反しない、としています。

例えば、国会が最新型列車の鉄道新設についての法律を制定しようとしたとします。

しかし国会議員は鉄道の建設、運営等についての専門知識を知りません。
これではいつまでたっても法律は制定できません。

そこで専門知識を有する行政機関に法律の制定をお任せします。
お任せするときは国会は法律の抽象的なことだけ決めておいて具体的なことは行政機関が決める、という具合になります。













国会単独立法の原則の例外内閣の法案提出権についてですが、その通り内閣の法案提出権とは内閣から国会に法案を提出する、というものです。

法律は、法律案提出→審議→表決、という過程を経て成立します。通説では内閣の法律案提出権は国会単独立法の原則に反しない、としています。

例えば、先ほどの例の続きで内閣が鉄道についての委任立法を受けたとして、河川の近くに線路を引くときは河川についての法律制定が必要になったとします。

しかし内閣に法案提出権がなかったら、いつまでたっても河川についての法律はできません。

内閣の法案提出権は専門知識を必要とする法律については専門知識が豊富な内閣に立案させることがのぞましいこと(専門性)、立法過程で重要な審議・表決は国会が行なうことで内閣の専横は防止できること(許容性)、という理由から認められているのです。







【まとめ】
第3部 統治機構
第14章 国会
二、国会の地位

・国会の地位は憲法上

1、国民の代表機関
2、国権の最高機関
3、唯一の立法機関

という3つの地位がある。

1、国会は国民の代表機関であるという考え方では、議員は国民に自由委任されているとしている(通説)。近年では半代表の考え方も支持されている。

2、国会は国権の最高機関であるという考え方は政治的美称にすぎない。

3、国会は唯一の立法機関であるという考え方には、

@国会中心立法の原則(例外:委任立法、最高裁判所の規則制定権、地方公共団体の条例 、両議員の規則制定権)
A国会単独立法の原則(例外:地方特別法、内閣の法案提出権)

の2つの意味がある。

                     ケンくんノート


第3部 第14章 国会 二、国会の地位 おしまい

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