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第2部 第5章 基本的人権の原理

一、人権宣言の歴史  二、人権の観念  三、人権の内容  四、人権の享有主体


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四、人権の享有主体



ここで一般の国民のほかにどんな人に人権が保障されているか、を説明していきます。








人権には普遍性があり、どんな人にも保障されます。
しかし天皇や皇族はどうだろう、外国人にはどうだろう、という疑問が生じますね。











1 天皇・皇族


まず天皇・皇族についてです。
天皇・皇族も日本国籍を有する国民であるため、人権は保障されます。しかし一定の制約があります。

例えば皇族の男性の婚姻は、皇室会議を通してからしなければなりません。
一般の男性の婚姻にはこうした決まりはありません。

他にも職業選択の自由も制限されていたり、表現の自由も制限されていたり、等と天皇・皇族という職務の特殊性から一定の制約がされています。



2 法人


続いて法人です。法人とは個人ではなく人の集まりのことです。

例えば会社、労働組合、宗教団体、等のことです。結論から言うと法人にも性質上可能なかぎり人権が保障されます。

判例・通説も認めています。しかし自然人と違って特別の規制に服します。








ケンくんは優しいですね。しかし法人は自然人と違って大きな経済力を持っていたり、社会的な実力を持ってたりします。
したがって自然人よりも広い範囲の積極的規制をすることが許されるのです。








法人の人権が規制されるか否か、が争われた判例があります。南九州税理士会政治献金事件八幡製鉄事件です。

まずは南九州税理士会政治献金事件から説明します。

この南九州税理士会政治献金事件では、税理士会が税理士法を業界で有利な方向に導くための法改正の政治資金として、特別会費を徴収する決議をしました。


南九州税理士会政治献金事件では、会員にとって強制加入団体である税理士会は現実的に脱退の自由が認められていないため、そのような決議は無効である、としました。

税理士会の政治献金は、税理士会の持つ政治信条とは異なる政治信条を持つ会員の政治信条を害するものであって許されない、としたのです。




次は八幡製鉄事件です。


この八幡製鉄事件でも法人(株式会社)に政治献金の自由が保障されるかが争われました。

最高裁は株式会社にも政治献金の自由は政治活動の自由として保障され、法人であることを理由に特別の制限はない、としました。








南九州税理士会の場合、会員は現実的に脱退することが不可能です。

それに対して八幡製鉄事件の場合、法人(株式会社)のすることが気に入らなければ、株を譲渡するなりして株主を辞めれば良いではないか、という考えだったのです。

この八幡製鉄事件は、法人の人権と個人の人権との調整という視点がおろそかになっているのではないか、という批判も多い判例です。

3 外国人


最後は外国人です。外国人とは日本国籍を持っていない人たちのことです。

外国人にも権利の性質上可能な限り人権が保障されます。判例・通説も認めています。
しかし、日本国民と違って保障されない種類の人権もあります。









代表的なものが参政権、社会権、入国の自由です。外国人にはこれらの権利が保障されません。
それぞれ説明します。

まずは参政権です。参政権とは政治に参加する権利のことです。
具体的には、選挙で投票する権利(選挙権)や、選挙人として立候補する権利(被選挙権)のことです。

選挙は日本国民が主催者として国の政治に参加して、国政の最高決定権を発揮する重要なものです。
したがって外国人には認めない、と考えられています。









ケンくんは優しいですね。

しかし外国人は国の政治には参加できないものの、地方自治体レベルの選挙権は永住資格のある定住外国人には法律で選挙権を与えることは禁止していません。

判例も認めています。地域の生活に密着しているから、という理由からです。




次は社会権です。
社会権とは、最低限の生活を保障するために国家がお金をあげたり、施設を利用したりすることを請求できる権利でした。

社会権にはお金がかかります。今、日本は財政がとても苦しいのです。

日本国民を救済するのにいっぱいいっぱいです。
したがって外国人まで社会権を認めているわけにはいかないのです。









ケンくんは偉いですね。

でも歴史的経緯や日本での生活実態を考慮すれば在日の韓国・朝鮮・中国の人たちにはなるべく日本国民と同じ扱いをすべきだ、と考えられています。



最後に、入国の自由です。入国の自由も外国人に保障されません。

国家は安全と福祉に危害を及ぼすおそれのある外国人の入国を拒否しても良いことになっています。
これは日本だけでなくどこの国でもそうです。入国の自由がないから在留の権利も保障されていません。








ここで問題となるのが再入国の自由です。再入国とは一度入国した外国人が再び入国することです。

最高裁判例
では外国人の再入国の自由は保障されない、としています。出国の自由は保障されます。


これに対して学説では著しく日本の利益を害さない限り再入国は許可されるべきである、と解く見解が有力です。出国の自由は保障されます。




外国人の人権を制約することを示した事件は、マクリーン事件指紋押捺拒否事件があります。

マクリーン事件は、外国人が日本の政治に直接介入するための政治活動を禁止することを示しています。








ケンくんは優しいですね。マクリーン事件も入国を拒否したのならまだしも、更新を拒否してしまったことが問題視されています。

政治活動のどこまでが禁止かも明確な基準がない、等の批判もされています。



続いて指紋押捺事件です。









ケンくんは本当に優しいですね。
この後80年代に指紋押捺拒否闘争が各地で起きたり、国際的非難もあって法改正を重ねて現在では指紋押捺制度は廃止されています。





【まとめ】
第2部 基本的人権の尊重
第5章 基本的人権の原理
四、人権の享有主体

1、天皇・皇族にも人権は保障される。しかし一定の制約がある。

2、法人にも性質上可能な限り人権は保障される。しかし特別の規制に服する。
  法人の性質上当然に発生しない人権は保障されない。

3、・外国人にも権利の性質上可能な限り人権は保障される。
   しかし保障されない種類の人権もある。参政権、社会権、入国の自由等である。
  ・政治活動の自由は一応保障されるが、日本国民よりも大きな制約がある。
  ・外国人の再入国の自由が保障されるかどうかは判例と学説で争いがある。

                     ケンくんノート


第2部 第5章 基本的人権の原理 四、人権の享有主体 おしまい

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