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第2部 第13章 その他の人権

一、参政権  二、受益権


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二、受益権



受益権について説明します。

社会権は、国家の作為を求める権利でした。

作為とは「何かをすること」です。つまり国家に「何かをしてくれ」と求める権利です。
これとは別に、国民が国家に対し、何らかの作為を求める権利のうち、社会権に分類できないものは受益権といいます。

つまり、受益権とは、国家に作為を求める権利のなかで社会権以外のものすべてをひっくるめたもの、と捉えてください。

受益権には請願権(16条)、裁判を受ける権利(32条)、国家賠償請求権(17条)、刑事補償請求権(40条)、があります。

それぞれ順に説明していきます。






1 請願権



憲法16条は、請願権の保障を規定しています。
請願権とは、国または地方公共団体の機関に対して、国務に関する希望を述べる権利のことです。







請願権は、国民の意思表明の重要な手段の一つだからです。

請願権は、専制君主の絶対的支配に対して、国民が自己の権利確保を求める手段として発達してきた権利です。

歴史的には重要な権利なのです。
昔は国民には意思表明手段がなかったため、請願権は、意思を表明する有力な手段でした。

しかし、現代は、言論の自由が広く保障されテレビやインターネットなど政治意思を表現する手段も格段に増えました。


そう考えると、現在の請願権の意義は相対的には弱まりましたが、それでも依然として、請願権は、政治に参加する手段として意義があるということです。








もちろん、請願したからと言って、請願内容を必ず実現してもらえるという法的拘束力を国に課すことはできません。

国は請願をうけたら誠実に処理する、という努力義務を課すにとどまります。








そうです。しかし昔のように、お上に意見を言っただけで、処刑されていた時代に比べたら、受益権は民主的な権利なのです。








2 裁判を受ける権利



憲法32条は、裁判を受ける権利の保障を規定しています。

裁判を受ける権利とは、政治権力から独立した公平な司法機関に、すべての個人が平等に権利・自由の救済を求める権利かつそのような公平な裁判所以外の機関から裁判されない権利をいいます。





裁判所に違憲審査権を行使して、救済を受けるためには、裁判所に訴えを起こす権利が保障されていることが必要です。

したがって、裁判を受ける権利は、人権保障と法の支配を実現するために、不可欠の前提です。(法の支配は1章三参照)


日本国憲法は、民事事件、刑事事件のみならず当然に、行政事件も裁判で審理します。

明治憲法では行政事件は通常の裁判所では審理されませんでした。

明治憲法では行政事件は通常の裁判所とは違う系列の裁判所で審理され、公正な裁判は行なわれませんでした。


裁判を受ける権利を「奪はれない」とは具体的に

・民事・行政事件においては、裁判所の拒絶は許されない
・刑事事件においては裁判所の裁判によらなければ刑罰を科せられない

ということを意味しています。
刑事事件においては、特に裁判を受けることは重要です。

これは37条1項でも重ねて保障されています(11章三1参照)。




3 国家賠償および損失補償



憲法17条は、公務員の不法行為に対して損害賠償を請求する権利を保障しています(国家賠償請求権)。



明治憲法では国家賠償請求権規定はなく、公務員の不法行為によって損害を受けた場合に賠償請求が可能かどうか曖昧でした。

したがって、日本国憲法では条文を設けて国民の救済をきちんと図ろうということになっています。

こうした趣旨から国家賠償法(国又は公共団体が起因する損害を賠償する法律)が制定されています。



そして憲法40条は、刑事手続において抑留・拘禁された被告人に無罪の判決があった場合に、被告人の被った損失を補うための刑事補償請求権を定めています(刑事補償請求権)。

刑事補償請求権も明治憲法にはなく、補償も不十分でした。しかし、日本国憲法ではきちんと規定しています。



同じくこの刑事補償請求権規定も明治憲法にはなく、補償も不十分でした。
しかし、日本国憲法ではきちんと規定しています。













その通りです。
ここまで日本国憲法の三大基本原理である、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を説明してきました。

この三大基本原理を実現するための政治を行なうのが統治機構です。
統治機構とはどのようなものでしょう。以下14〜17章で、統治機構について説明していきます。


【まとめ】
第2部 基本的人権の尊重
第13章 その他の人権
二、受益権

  受益権とは、
  国に対して一定の行為を請求する権利である。
  下記の種類の権利がある。

1、請願権(16条)とは、
  国または地方公共団体に  対して、国務に関する希望を述べる権利のことである。
  国または地方公共団体は、請願された内容を誠実に処理する義務を負う。
  しかし、実現する義務はない。

2、裁判を受ける権利(32条)とは
  @政治権力から独立した公平な司法機関に、
  すべての個人が平等に権利・自由の救済を求める権利である。
  A公平な裁判所以外の機関から裁判されない権利である。

3、国家賠償請求権(17条)とは
  公務員の不法行為に対し損害賠償を請求する権利である。
  刑事補償請求権(40条)とは
  刑事手続において抑留・拘禁された被告人に無罪の判決が
  あった場合に、被告人の損失を補うための権利である。

                     ケンくんノート


第2部 第12章 その他の人権 二、受益権 おしまい

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